ケニアでコーヒー生豆の輸出禁止法案提出

コーヒー

こんにちは。コーヒー屋です。

ちょっと気になるニュースを見つけたので、和訳と、私の考えを書いてみます。

ケニアの議員が、生豆輸出禁止法案を提出

ソースはこちら→https://af.reuters.com/article/topNews/idAFKBN1J91LS-OZATP

以下、まずはニュースの和訳です。

 

ケニアのある議員が、農家の収入を増やすため、未加工のコーヒー豆の輸出を禁止する法案を議会に提出するつもりだと述べました。

東アフリカに位置するケニアは、コーヒーの生産量で言えば世界の約1%に過ぎません。しかし同国の最高品質のアラビカ豆は、世界中のロースターから、ブレンドその他の用途で強い需要があります。

生豆はケニアの5番目に大きな外貨獲得手段であり、ナイロビでのウィークリーオークションで、または直販で海外のバイヤーに売られ、焙煎され、パッケージされ、高い付加価値を乗せて売られています。

昨年度はコーヒーの輸出で2億1400万ドルを獲得しました。

 

Jubilee党の議員である Moses Kuria 氏は、「いくつかの国は、ケニアの生豆を輸入し、加工したのち販売目的でケニアに再輸出している。したがってケニアの農家は、自分たちの生産物から最大限の利益を得ることが出来ておらず、喰い物にされている」と言います。

彼は、いかなる形でも生豆の輸出を禁じる法案を提案しています。

Kuria氏は、消息筋に宛てたレターのなかで「私は、焙煎して、挽いて、パッケージング・ブランディングをして、「メイド・イン・ケニア」と明記されたコーヒー豆のみを輸出可能とする法案を議会に提出する予定です」と述べています。

農業省やコーヒー輸出業者からのコメントはまだ出ていません。

ケニアのコーヒー生産量は1988年度の129,000トンがピークでしたが、マネジメントの問題や価格の不安定さが要因で、減少を続けています。農家の転作や離農には歯止めがかかっていません。

政府のデータによれば、2016年度の収量は12%減の40,700トンでした。

 

以上、ニュース記事の和訳でした。

所感

Kuria氏について

「ケニアの政治体制」とかでググってみると矛盾したいろんな情報が出てくるのでよく分からないのですが、この法案を提案しているKuria氏が所属するJubilee党は政権与党のようです。

氏のFacebookやTwitter、Youtubeの関連動画をチラ見した印象では、コーヒー以外にも、茶葉を生産する農家が適正な対価を得られるようにしたいという問題意識もお持ちのようです。

彼を支持するようなコメントもけっこう寄せられています。ネットを通した情報発信を積極的に行いながら、市井に寄り添った活動をされている方なのかなという印象を持ちました。

コーヒーの鮮度について

しかしながらKuria氏の今回の提案、個人的にはあんまり良くないんじゃないかなと思っています。

問題なのは鮮度です。

 

コーヒー豆は、生豆の状態ではけっこう保存が効きますが、焙煎後はすぐに飲まないと劣化が早いです。

ですから焙煎豆は冷暗所に密閉保存するなど、保存に気を使う必要があります。さらに一般的なセオリーとして焙煎後1ヶ月以内には飲み切りたいとされていますし挽いてしまったらその日のうちに飲むべきです。(だからコーヒーマニアは自分のミルを持っている訳ですね)

 

一方で生豆を輸入する際には1〜2ヶ月程度の時間が掛かりますし、湿気や高温で傷んでしまうリスクもあります。

だからケニア国内で焙煎し、さらに挽いてしまってから輸出というのは、グルメ的な観点から言えばあり得ないと思います。たぶん日本に到着した時点で賞味期限切れです。

 

更に言えば、ケニア産のコーヒーというのは単純に苦いだけのコーヒーではなくて、フルーティで奥深いフレーバーを楽しむものです。
ターゲットがそういう層ですから、挽いた豆を1ヶ月掛けて運んでくるなんていうのはなおさらあり得ないと思います。

ロースターはぼったくり過ぎなのか?

ケニア国内の農園に比べて、商社やロースターが利益を取りすぎている、っていうのが今回の法案の背景です。

しかし、本当にそうでしょうか?

確かに農家が売っている生豆と比べて、焙煎豆の売値が圧倒的に高いのは事実です。
しかし実際に焙煎をしている身から言わせてもらうと、付加価値を付けてるんだからそのぶん高く売るのは当然です。

現地に適正な対価を払う「フェアトレード」の考え方も業界に根付いて来ていますし、そういう流れの中でも変わらない、ロースターの懐に入る利益率の水準があるんだとすれば、それが適正な利益率なんじゃないでしょうか。

「消費国でのロースト」が最適解

ケニア国内にロースターがあるのかないのかよく分からないんですが、基本的にはケニア国内で飲む分はケニア国内でローストし、海外で飲まれる分はそれぞれの国でローストするというのが最も自然で、おいしい飲み方のはずです。

そこに関してはお上がしゃしゃり出るんじゃなくて、生産者と消費者に任せておけば最適解が出てくるんじゃないかと思うんですけどね。

 

農園が、周辺地域で消費する分に関しては自分たちで焙煎して売ってしまうみたいなやり方をしてもいいと思います。

またケニアの消費者にも、見る目を持って欲しいですよね。逆輸入したものより、ケニア国内で焙煎した商品の方が鮮度もいいし余計なコストも乗りません。

まとめ

このいびつな規制が成立してしまったら、まともなケニアコーヒーは飲めなくなります。世界のコーヒー文化が確実に損なわれます。

ってな事をここで言っていても何にもならんのですが、Kuria議員のFacebookとかに拙い英語でコメントしたら議論とか出来るのかな?

ともあれ、見過ごせないニュースではありますので今後も注視していきます。

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