『レッド・ツェッペリンⅢ』全曲レビュー

こんにちは。
今回取り上げるのはツェッペリン最大の問題作である、サードです。

ファースト・セカンドではブルースを下敷きとした、エネルギー溢れるハードロックのスタイルで高く評価されました。
しかしツェッペリンは、ここにきてよく分からない方向転換をしました。

息つく暇も無いツアーの日々に疲弊し、
「まだロンドンで消耗してるの?」
と言ったか言わないかは定かではありませんが、
ウェールズの、電気も通らない山小屋に引きこもります。

そうして出来上がった今作。
大半がアコースティックな曲調で、トラッドミュージックの影響を積極的に取り込んだ作風になっています。
正直言って今作ではそれがいい方向に作用しているのは「移民の歌」くらいだと思います。
しかし、現代の都会でやってるハードロックというくくりから一歩踏み出して、山や森といった自然、魔術の時代から神話の時代までの広い世界観を自らの音楽に取り込もうという試みが後に実を結ぶのが、「天国の階段」「カシミール」「アキレス最後の戦い」といった名曲たちです。

そういった意味では、このサードアルバムは非常に意味深い「種蒔き」をした作品だと言えるでしょう。
その「種蒔き」の様子自体が面白いかどうかは別として。

いちおうセールス的には全米1位、全英1位を確保していますが、これは前作であるセカンドの高評価を引っ張った部分が多々あるでしょうね。ファイナルファンタジー8と一緒です。

さらに、この『Ⅲ』が期待値を下げたこともあってか、次作にして傑作の『Ⅳ』は全米1位を取り損なうという事態も発生します。

全曲レビュー

1.Immigrant Song

ご存知「アァア〜〜〜、アッ!」の雄叫びが印象的な1曲目。
間違いなくこのアルバムで最大の名曲でしょうね。

ギターリフはまるで打楽器のように強烈。
よく聞くとボンゾのドラミングもキレッキレです。

世界観も秀逸で、欧州へ攻め入るバイキングについての歌。
神々の命により、我々は新たな大地を目指すのだ。「ヴァルハラへ行くぞ!」と。

ちなみにヴァルハラというのは北欧神話の主神オーディンの館で、勇敢に戦って戦死した者の魂が集まるところだそう。ここへ召されることは名誉で、だからバイキングの戦士は死ぬことを恐れずに戦うのだそうで。

なんて具合に歌詞を味わってみると、なおさら威勢のいい曲です。

 

しかし「うぅ・・・うぅ・・・うぅ・・・」という、尻切れトンボみたいな終わり方は、どうにかならなかったのでしょうか。このアルバムは早くもこの辺から、雲行きがあやしいです。

2.Friends

アコギに乗せて「孤独な人がいたら、笑いかけてあげよう」といった、至極平和なメッセージを歌った曲。

なのに、後ろの方でよく分からないミューンミューンという不穏な音が鳴っていて、ギターもはじめは心地いいが徐々に無表情なリピートになっていき、電子ドラッグのような気持ち悪さが漂います。

なんでこんなアレンジにした?

3.Celebration Day

なんだかいそがしい曲。

特別印象に残るパッセージなんかはないんですが、終始速いテンポながらも変化に富んでいて、アイデア豊かな曲です。

アコースティックとエレキの音がうまい具合に混ざり合って独特の感触です。これが後の名曲「永遠の詩」につながっていくような気がします。

4.Since I’ve Been Loving You

出だしですよね〜この曲は。
あまりにも哀愁があふれすぎていて、まるで場末のバーの孤独なオカマが主役のコントみたいです。

歌詞も実にめめしく、そしてクドい

お前を愛しているから、出来るだけのことはやったんだよ。
毎日7時から11時まで働いて、
それなのにお前は・・・
だけどお前を愛しているから・・・

っていうのを何回言うの? ってくらい繰り返し歌ってます。

正直言って聴き疲れする曲です。

 

しかし、プラントのパワフルな歌唱を堪能するには、これ以上ないっていう曲でもありますね。

だいたいツェッペリンの曲っていうのは、「歌」を聴いてもらうための曲ではなくて、演奏がカッコよければそれで充分。
リフがカッコよければサビは「わなほらららん♪」でも良いし、
「アァア〜〜〜、アッ!」なんてシャウトができれば花丸です。

この曲のように情感たっぷりに歌い上げるっていうのは、異色中の異色です。
レアなので、しっかり歌を聞いておきましょう。

ちゃんと聞いてみると、これがまた凄まじい歌ですよ。

5.Out On The Tiles

ライブでは「ブラック・ドッグ」のイントロとして使われる曲。
むしろ出だしのフレーズの後に「ブラック・ドッグ」が始まらない方が不自然に感じてしまいます。

6.Gallows Pole

トラディショナルソングの改作だそうです。

うーん、だから何? とでも言いましょうか。
元がそれほど良い曲とも思えませんし、アレンジしたからといってとくに面白味も見出せないですね。

7.Tangerine

甘く、儚く、きれいなメロディの曲です。

アレンジもあっさりとしてポワポワで、すごく気持ちが良い曲ですね。

ひとつだけ難点を挙げるとすれば、コーラスが下手すぎないか?
これはペイジあたりが歌ってるのでしょうか?

8.That’s The Way

こちらもきれいなアコースティックの曲。

変なアレンジも無し。聞いていてとても穏やかな気持ちになれる名曲です。

普通に良い曲すぎてあんまり書くことが無いなぁ・・・

9.Bron-Y-Aur Stomp

邦題は「スノウドニアの小屋」
ブロンイアーというのは彼らが休暇で訪れたコテージの名前で、スノウドニアはその地域の名前です。
例えるならば「Tokyo Skytree」という曲を「墨田区の電波塔」と訳すようなものか。

なぜわざわざこんな訳し方をしたのかは不明ですが、後に「ブロン・イ・アー」なる曲が発表されるので、結果的には両者をうまいこと区別できてグッジョブな邦題となりました。訳した人は予知能力でも持ってたんでしょうか。

 

こちらも軽やかなアコースティックの曲ですが、ボンゾの足踏みドラムや手拍子が入って、非常に元気。ウキウキする曲です。

10.Hats Off To Roy Harper

みょーんみょーんと、変な伴奏をしながらブルースを歌った、何がやりたいのか分からない蛇足みたいな曲

まとめ

以上、問題作のサードアルバム全10曲をご紹介させていただきました。

正直言って「捨て曲」もあるアルバムですが、
「移民の歌」「貴方を愛し続けて」「スノウドニアの小屋」は名曲。
「タンジェリン」「ザッツ・ザ・ウェイ」も佳曲と言っていいでしょう。

その他の変な曲たちも含めて、ツェッペリンの他のアルバムには無い、独特の世界観を持った作品です。

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