こんにちは。自動車部品メーカーを辞めた者です。
今回はメーカー特有の「急がない文化」の話です。
もくじ
飲食業でのカルチャーショック
メーカーを辞めて、飲食業の現場で働くようになって、軽いカルチャーショックを受けました。
皆さん、忙しくなってくると「急ぐ」んですね。
何を当たり前のことを、と思われるかもしれませんが、コレ、製造業にはあまり無い習慣です。
メーカーは、急いではいけない
特に現場作業の話ですが、メーカーでは、「急いで作業をする」というのは、ご法度です。
なぜなら、急ぐとミスをしやすいし、「一応確認したいけど、まあいいか」といった気持ちから、見落としも発生しやすいからです。
メーカーは、ミスるとダメージがでかい
安全面
でっかい機械を使っているので、うっかりすると大怪我します。
指を落っことしたり、脚を切断してしまったり、下敷きになったり。フォークリフトに轢かれたり。
そういった大怪我でなくても、手袋をはめる手間を惜しんだために指先を切っちゃったとか。雑に部品を置いたら、足の上に落っこちてきたとか。
とにかく現場は「危険がいっぱい」なので、落ち着いて、ゆっくり行動するのが基本中の基本です。
品質面
不良品を出してしまうと大変です。
トヨタのジャストインタイム方式って、聞いたことありますか?
簡単に言うと、「完成車メーカーのラインで車を組み立てる、まさにその時に部品を納入してくれ」っていうやり方です。
トヨタに限らず、ものづくりをする多くの会社が、程度の差こそあれ、この方式を採用しています。
在庫の保管場所や、部品を右から左に動かす手間が省けるのがメリットです。
これ、部品メーカーが「ミスったからここからここまで作り直し」とかやってると、納入が間に合わなくて完成車メーカーのラインが止まっちゃうんです。
そうなると完成車メーカーから「ウチの◯◯ラインの何十名、今日は仕事になりませんでした。残業・休出で挽回生産します。そこの人件費はお宅のせいなので、ヨロシク」という請求が来ちゃいます。大変な金額です。
納入した部品の寸法がおかしくて、お客さんのラインで組み付け作業ができなくて、ラインが止まっちゃいましたなんて場合も同様ですね。
それでも完成車になる前に見つけられればまだいいですが、市場に出てしまってから発覚すると大変です。
ユーザーに呼びかけて補修しなきゃならないし、下手すれば交通事故につながる可能性もあります。
エアバッグ製造のタカタ社なんか、大事になっちゃったいい例ですね。
同社の場合は雑な製造をしたからというわけではなくて、設計段階で問題があったわけではありますが。
混雑緩和は、仕組みで行う
とにかく、急いで作業をしなきゃいけないようなのは「仕組み」が悪いのだ、「仕組み」を改善しなきゃいけないというのがメーカー的な考え方です。
特に、世の中の皆さんにもっと知って欲しいのが、「負荷平準化」という考え方です。
他業種でも取り入れたい、負荷平準化
メーカーで言う「負荷」という言葉は、一般的に言う重荷とかストレスみたいな意味ではなく、「作業量」くらいの意味で使います。
「高負荷就労」と言ったら、生産数が多くて残業・休出が多い状態。
現場作業に限らず、事務仕事でも「今月は◯◯さん、負荷高いね」みたいに言ったりします。
「負荷平準化」とは負荷のバラツキを均すことです。
作業ごとの、負荷平準化
例えば、あるラインにはA,B,Cの3工程があったとします。
現在、工程Bの作業だけ他工程より時間が掛かっちゃってるとします。
ここで「工程Bの人、大変だけどスピード上げて作業してね」っていうのは、NGなやり方。
工程Bの作業を他工程に振り分けて、全行程の負荷を同程度にしてやる、っていうのがメーカーのやり方です。
↑これを、
↓こんなふうにしてやるイメージ。
生産数の、負荷平準化
たとえば、製品Aの、客先からのオーダー内示が
6月:100個
7月:250個
8月:100個
だったとします。
ひと月に250個は作りきれないので、7月は残業・休出に加え、増員の必要があります。
しかし8月は生産量が元に戻ってしまうので、せっかく人を雇っても、すぐに人が余ってしまうことになります。
こういう場合、お客さんにお願いして、月々の納入数を
6月:150個
7月:150個
8月:150個
のように平準化させてもらえないかと交渉します。
また、在庫を持っておけるような製品の場合、客先にお願いしないまでも、6月に生産を前倒しして7月分の在庫を持っておく、という場合もあります。
こういうのが生産数の平準化です。
まとめ:「急がない文化」の波及を
というわけで、メーカーでは、「急いで」作業をするのは悪いこと、急がないような仕組み作りが大切、という話をさせて頂きました。
それ以外にもメーカーでは、
- 作業者に無理な姿勢で作業をさせてはいけない
- まぎらわしい・間違えやすい作業をさせてはいけない
というような考え方が根付いています。
こういうのは、メーカーの良い部分だと思いますね。
飲食業の現場ではこのへん「気をつけましょう」「急ぎましょう」の精神論しかなくて、ミスを無くす工夫がぜーんぜん足りてないように感じています。
他業界ではどうでしょうか?
こういうメーカー的な考え方、いろんな人に知って欲しくて書かせていただきました。
それでは。