こんにちは。
学生時代に「プログレ愛好会」を立ち上げたことがある、愚か者です。
第10位 グリフォン『女王失格』
「ドラクエのサントラ」という比喩がぴったりの1枚。
このグリフォンというのは、英国の伝統音楽を下敷きとしたバンドです。
中世から使われている古い楽器なども使用していて、まさしく「中世ファンタジー」の香り高い音楽を奏でます。
このサードアルバムからは電子楽器も積極的に使うようになったので、ファンタジーっぽさに加えて「スーファミ」っぽさも手に入れています。
曲のセンスも、荘厳さとコミカルさのバランスが良く、聴き疲れしません。
プログレらしく、イメージ豊かなアルバムです。
第9位 イングランド『枯葉が落ちる庭園』
こちらもその名の通り、英国らしい香りがプンプンするバンドです。
『不思議の国のアリス』的な、美しさのなかに頽廃と屈折したユーモアを孕んだ、独特のニュアンスがあります。
傾向としてはジェネシスに近い音楽性ですが、このデビュー作1枚でジェネシスを超えたと言っても過言ではない完成度です。
惜しまれるのは、そのデビュー時期が既にプログレ・ムーブメントが死にかけていた70年代後半だったということ。次回作を発表することなく、姿を消してしまいました。
そんな行く末を暗示するかのような、哀愁も漂う作品です。
第8位 ジェントル・ジャイアント『パワー・アンド・グローリー』
ジェントル・ジャイアントのアルバムのなかでは、最もポップで親しみやすい作品ではないでしょうか。
ELPやジェネシスの例もあり、プログレファンにとって「ポップである」ことは、必ずしも良いことではありませんが、基本的に、わざわざヘンテコでとぼけた曲作りをするジェントル・ジャイアントですから、これくらいがちょうどいい塩梅だと、個人的には思います。
彼らの「変な」ノリに、こちら側も無理なく一体化して、一緒にノレるアルバムです。
第7位 キャラヴァン『グレイとピンクの地』
それにしても、綺麗なジャケットですね。
内容に関しては開口一番の、のほほんとしたトロンボーンの音が全てを物語っています。終始、淡々として、のっぺりとしていて、それが抜群に気持ち良いアルバム。
いちごミルクのような、明確な意思を持って甘口の音楽。ぜひ、気合を入れずに聴いてください。
第6位 四人囃子『一触即発』
日本のバンド。
日本的な風情を見事に漂わせた作品です。
セミの声が響く、じっとりと蒸し暑い夕方の坂道が、万年床の敷かれた四畳半の、うっすらとした黴の匂いが、モノクロフィルムのざらざらとした感触でまぶたの裏に映し出されるような、そんな錯覚を覚えるほど、絵画的でイメージ豊かで、「空気感」がある作品です。
演奏力もハイレベルながら決して詰め込み過ぎず、「間」をたっぷり取って聴かせるスタイルです。
そんなところにも「侘び寂び」を感じます。
第5位 ロカンダ・デッレ・ファーテ『妖精』
プログレ終末期の蛍火。
70年代末にイタリアで突然現れ、突然消えたバンドの唯一の作品。
センチメンタルで、とても美しいメロディと音色がウリながら、キビキビとした演奏・スピーディで冗長にならない展開力も持ち合わせた非常に高水準のプログレバンドです。
特に1曲目の「ひとときの静寂」という曲が白眉。
泣きのメロディを持った曲ながら怒涛の畳み掛ける演奏で、ここまで動的に「静寂」を表現できるのかと、驚きますよ。
触れたら壊れそうな儚さを持ちながらも、キラキラと力強く燃え上がるアルバムです。
第4位 ピンク・フロイド『原子心母』
フロイドの名盤と言えば『狂気』や『ザ・ウォール』等も挙げられますが、私がおすすめしたいのは断然この『原子心母』です。
『狂気』以降のフロイドは、ロジャー・ウォーターズ主導で明確なコンセプトを持ったアルバムを作りました。
誤解を恐れずに言えば、他人との疎外を主題にした『ザ・ウォール』などは、ビートルズやフーあたりでも作れちゃいそうな気がします。
それに対し「狂気以前」に当たる『原子心母』や次作の『おせっかい』では、もっと言語化できないものがテーマになっています。
何を言いたいのかは分からないけど雰囲気だけはある、ってヤツです。「言葉」に縛られない分、イメージを膨らませる余地があります。
それこそ母なる地球という星の持つ大きな生命の息吹から、この胸の小さな鼓動が孕む生の実感まで。
まさしくピンク・フロイドでなければ作れない世界観です。
第3位 マグマ『M.D.K』
フランスの恐ろしく「濃い」バンドです。
コバイア星からやってきた宇宙人というギミックで、独自の言語「コバイア語」で歌うという、目を逸らしたくなるくらい「やっちゃってる」人たち。
彼らの代表作がこの『M.D.K(メカニーク・デストラクティヴ・コマンドー)』
アルバム1枚を通してひとつの組曲になっています。
内容はなんというか、
魔術というか宗教というか・・・
とにかく怪しく、暗黒で、ひたすらにエネルギーが大きく、テンションが高い作品。
キング・クリムゾンのように突然爆発する衝動というのとも違っていて、もっとジワリジワリとせり上がってきて、それこそマグマのように、地面のすぐ下で途方もない熱量を持ってうごめいているような。
なんか心の奥の方の、原始的な箇所を突き動かされる音楽です。
第2位 ハットフィールド&ザ・ノース『ロッターズ・クラブ』
イギリス・カンタベリーシーンの最高峰のバンド。
色とりどりのおはじきの様にキラキラと輝き、同時にちょっぴりユーモラスでかわいい音色。
あくまで軽やかに、めまぐるしく移り変わる機動性。シュールな浮揚感。ロマンチックな情感。ほのかに漂う気だるさ。日本の古語でいう「うつくし」という表現がピッタリのアルバムです。
キレイで、同時にかわいらしい。プログレ界の小野小町。
第1位 P.F.M.『幻の映像』
P.F.M.は、イタリアを代表するロックバンド。(あえてプログレバンドと呼ばないのは、80年代以降の典型的プログレから離れたスタイルもまた、ハイクオリティだから。)
演奏技術も曲作りのセンスも、イギリスの四天王バンドを軽く凌駕しています。
それでいてプログレお得意の「狂気」とか「変態性」は微塵もない、まさしく正統派で優等生なバンド。
P.F.M.が、ELPのマンティコア・レーベルから世界デビューしたことによって、イタリアをはじめとした大陸のバンドにもスポットが当たり、それまでイギリスで完結していたムーブメントは爆発的に広がり、豊穣な実りを生みました。
で、その記念すべき世界デビューアルバムがこの『幻の映像』です。
内容は1st,2ndアルバムの楽曲の焼き直しです。
それぞれ聴き比べてみると、素朴で垢抜けない1st,2ndに対してこの『幻の映像』は非常に洗練されています。
このアルバムをひとことで表現すると「幽玄」です。
美しいメロディ、ドラマチックな展開、それらが絶妙なバランスで、優しく触れるようなタッチで纏め上げられています。
本当に全方向から、隙のない作品です。