伝説のブルースマン、ロバート・ジョンソンはドコがすごいのか?

音楽

こんにちは。
本日は私が大好きなブルースマン、ロバート・ジョンソンの魅力についてご紹介します。

おそらく彼についてググっている人は、「エリック・クラプトンやなんかが尊敬しているミュージシャンらしいけど、どんな人なのかしら?」
という人か、
「すごいブルースマンっていうから聴いてみたけど、なんかギターと歌しかないし、あんまりメロディとか無いし、全部似たような曲だし、結局何がすごいわけ?」
と感じている人かのいずれかが大部分かと思います。

そこで、私なりに「ロバート・ジョンソンの魅力はコレじゃあ!」というのを紹介します。
彼の音楽を理解し、楽しむ助けになれば幸いです。

ロバート・ジョンソンのスゴいところ

まったり感がすごい

ロバジョンを聴いてエキサイトする人もいるのでしょうが、うちでは基本的にまったりBGM扱いです。
休日の、いつもより遅い朝食時なんかにスピーカーから低めの音量で流してることが多いです。

1930年代の、間の抜けた音質がいっそカワイラシイし、ギターと歌しかないので、いきなり予想してなかった音が鳴ってビックリさせられることもありません。

もちろんしっかり聴くと「うわ、スゲエ!」と感じる箇所も多々あるのですが、はじめのうちは、なごみ系のBGMとして親しむのも全然アリだと思います。

そもそも、ブルースというのは、いくぶん予定調和な音楽です。

基本的な形式が決まっていて、3行詩で、しかもたいてい1行目と2行目が同じ。3行目の中間で、裏声でハミングを入れたりします。

俺は十字路に行って、跪いたのさ
俺は十字路に行って、跪いたのさ
天の神さまに祈ったんだ、フゥ〜♪ かわいそうなボブを救っておくれと

という感じ。

サゲを知っていても落語が面白いように、この基本的な形式が自分の中で定着すると、お決まりのパターンに対して「ですよねー」「待ってました」てな具合で、受け入れて、味わう体制ができてきます。

アメリカ南部の広い地平線と、乾いた土の香りを想像しながら、心地よい単調さに身を任せるのは、たまらなく豊かな時間です。

ギターがスゴい

70年代以降のスーパーギタリスト達のようにソロを聴かせるようなことはしないので分かりにくいですが、ロバジョンのギターの技術はスゴイです。

ストーンズのキース・リチャーズは「はじめはロバート・ジョンソンが一人で演奏しているというのが信じられなかった」と語っています。

その言葉が示す通り、ロバジョンのスタイルは、ギターでリズムを刻みながら同時に歌い、さらにギターで歌うようなフレーズを同時に重ねる、というものです。

要はボーカル、リードギター、リズムギターを一人でやっているようなものです。

ブルースは歌詞と歌詞の間に、合いの手を入れるような隙間があります。
彼の「リードギター」的演奏を味わうには、この「歌の隙間」あるいは「イントロ」を意識して聴いてみるといいと思います。響きが美しく、タッチが繊細です。
その長い指が軽やかに動き回っているのが見えるようです。

「リズムギター」部分については基本的にずっと鳴っているので、好きなときに耳を澄ませばいいのですが非常に歯切れ良くて、気持ちがいいです。

27歳で死んだのがすごい

天才的なロックスターは、決まって27歳で亡くなります。

ジミ・ヘンドリックス
ブライアン・ジョーンズ(ローリング・ストーンズ)
ジム・モリソン(ドアーズ)
ジャニス・ジョプリン
カート・コバーン(ニルヴァーナ)
という面々ですね。

で、実はこの習わしの草分け的存在が、誰あろうロバート・ジョンソンなのです。

さらに、彼の場合そこにもうひとひねりあって、生前から彼は「悪魔と契約したからギターが急にうまくなった」などと言われており、それを逆手に取ってか彼自身「ミー&ザ・デビル・ブルース」「地獄の猟犬がつきまとう」といった曲を作っています。

それで他人の妻に手を出して、それを知った旦那さんから銃殺だか毒殺だかされたという、けっこう悲惨な最期を遂げたらしいのですが、当時のことで黒人が殺された事件なんかはきちんと捜査もされなかったらしく、このへんどうも詳しい事実は分からず、噂のレベルに留まっているということらしいです。

翻って60年代から70年代の初頭、エリック・クラプトンやそれこそブライアン・ジョーンズをはじめとしたストーンズの面々など、ロバート・ジョンソンをリスペクトするロックミュージシャンは意外に多く、ロバジョンとロックは切っても切れない関係でした。

そこで深読みというか想像力を働かせると、ロックスターが27歳で死ぬのは、ロバジョン一人では留まらない、悪魔の呪いでは無いか、と。そうして改めて見直してみると、27歳クラブの面々はロバジョンと同じ、ギタリスト又はボーカリストに限られています。

で、だから何だという話ですが、ロックはロマンであり、芸術は背景を知ることで味わいが増すものです。
スピーカーの向こうでこっちを見ている悪魔の視線を想像すると、ロバジョンの音楽はいっそう凄みを持って聴こえてきます。

それと、活動期間が短いだけにどれから聴けばいいのか悩む必要が無い、という面もありますね。『コンプリート・レコーディングス』というCDですべての録音が揃うし、特にスタイルの変遷なんかも無いので、統一感良くまとまってます。

入門におすすめの曲

They’re Red Hot

なぜこの曲をはじめに挙げたかというと、私が初めてロバジョンの『コンプリート・レコーディングス』を買ってきたとき、素直に楽しめた唯一の曲だから(笑)

だから「ロバジョンよく分かんねえや」と思っても、最悪この曲だけはちゃんと聴いてみてほしい。

実際この曲はあんまりブルースじゃないんだけれども、圧倒的にノリが良くて、スピード感があって、単純に楽しい。

もちろんこの曲もギターと歌のみで、打楽器のひとつさえ無いのに、今まで聴いた音楽の中でも指折りのスピード感を持っていて驚いた。「確かにこの人はすごい人だ。今はあまり理解できないけど、それは自分が至らないからでこの人は間違いなくすごい人だ」と思ったのをよく覚えてます。

歌の内容はというと、
「辛いトウガラシ。赤くて辛い。彼女はそいつを売っている」
みたいなことを延々と言っていて、まあはっきりいってどうでもいいような歌詞。

どうでもいい歌詞なのがこの場合かえって良くて、何も考えずにリズムに身をまかせるというか、微妙に舌足らずっぽい言い回しをしている歌詞の魔力なのか、何も考えないどころか頭から何か抜け落ちていきそうなくらいにとにかく軽いテンションに心を持って行かれます。

ボーカルのほうも、ダミ声やファルセットを織り交ぜながら終始、陽気に軽やかに歌い上げています。

Love In Vain Blues

彼女は俺を置いて旅に出てしまった。この恋はすべて、無駄に終わったんだな・・・という、切ないうた。

ローリング・ストーンズが情感たっぷりにカバーしているので、はじめにそちらを聴くのもオススメです。(『レット・イット・ブリード』というアルバムに入っています)せつなくも甘くほろ苦い、素晴らしいアレンジです。

しかし勘違いしてはいけないのは、ストーンズのが良カバーで、オリジナルは別に、、、という訳では、決して無いということです。

曲の核となる部分はロバジョンが表現しきっていて、ただなにしろギター1本という情報量の少なさゆえか、味わいのポイントに少し気付きにくい、というだけなのです。

一度分かってしまえば、もう「みなまで言うな」という具合でロバジョンのシンプルなバージョンを、しゃぶりつくす様に味わうことができます。

この曲は歌詞も良くて、

When the train left the station, There was two lights on behind.
The blue light was my blues, And the red light was my mind.

汽車が駅を発ったとき、うしろに二つの灯りがついてた。
青い灯りは俺のブルース。赤い灯りは俺の心。

なんてのはもう、情景描写が二重写しの様にめめしい気分に重なって実にしんみりと、趣があります。

Me And The Devil Blues

不穏なタイトルとは裏腹に、以外と平和なテンションの曲です。「地獄の猟犬がつきまとう」なんかは心底ブキミな音なんですけどね。

朝早くから「あの女を懲らしめに行くぜ」なんつって、並んで歩いていくロバジョンと悪魔。妙に楽しそうな情景です。

曲の構成やメロディ自体は、ロバジョンの作るブルースの定型にかなり忠実です。なので、これ以外の、ちょっと地味な曲たちを聴き込んでいく入り口としても、ちょうどいい曲です。

まとめ

以上、ロバート・ジョンソンの魅力について語らせていただきました。

ちなみに私は27歳のとき、「ロックスターならもう死んでる歳だし、ここらで第一の人生終わりにしてもいいかな」と思い、会社を辞めました。

では、さよなら。

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